8月28日、山梨地方最低賃金審議会が最低賃金を時給で61円の引き上げ1,113円とする目安額を答申しました。知事は同日の記者会見で、まだ十分ではないとの認識を示しました。合わせて、県として賃上げを後押しするための緊急支援策を行なうことを表明しました。その内容は日本共産党が繰り返し提案してきた「直接支援」(内容は後述)にあたるものです。当初は県が否定してきた「直接支援」ですが、これまでも賃上げについて日本共産党の県議会での論戦が一歩一歩県政を動かしてきました。山梨県の賃上げ支援策の課題と日本共産党の論戦について、その内容をまとめてみました。
賃上げを労働局へはたらきかけよと求め、知事を動かす
令和6年12月の県議会一般質問で日本共産党の菅野幹子県議が「岩手県や徳島県では、知事が、格差をなくし地域経済を活性化するには賃金アップが必要だとの認識に立ち、最低賃金審査会や労働局などへ働きかける中で、賃金引上げに対する支援が実現したと聞く。長崎知事も賃金引上げについて、県の労働局などへ直接働きかけるべき」と求めました。その場では明確な答弁はありませんでしたが、翌年8月、知事は山梨県労働局に対し、最低賃金の地域間格差是正などを求める要請書を提出しました。そして、今年も最低賃金審議会に知事が出席し、最低賃金の引き上げについて「前向きな判断をお願いしたい」と求めました。
地域間格差の現状を告発 県にも現状を示させる
東京都など都市部と比べ、山梨県の最低賃金額が低いことが地域間格差をうみ、人口流出の要因になっています。昨年令和7年9月県議会の一般質問で私は当時の最低賃金額を基に年間の賃金額を計算しパネルを提示(下図)。山梨県は東京都や神奈川県と比較して年収で33万円低いことを明らかにし、県の認識を質しました。その後、年明けの令和8年度予算編成に向けた説明資料で県はこの地域間格差について独自に試算を行ない、東京都などと比較して年収で35万円の開きがあることを示しました。県が地域間格差の実態を明らかにしたのはこれが初めてではなかったでしょうか。

全国一律の最低賃金制度を国に求める立場へ転換させる
賃金の地域間格差を是正するためには、全国一律で最低賃金を統一していくことが不可欠です。このことについても繰り返し、県として国に要請するように提案してきました。県は最初「現時点で国に要望することは想定していない」(R7年9月県議会答弁)など、及び腰でした。しかし、今年の2月議会で「県も地域間格差が年額で35万円になると示した以上、賃金の地域間格差を是正するために、全国一律の最低賃金制度を国に求めるべきだ」との私の質問に、知事も「本来、同じ労働の価値が地域によって変わるべきではないと考える~(中略)~議員御指摘のとおり、全国一律の最低賃金はあるべき姿であると考えているので、今後、国に対して議論を喚起してまいりたい」と答弁しました。
中小企業や小規模事業者への直接支援が欠かせない
山梨県の賃上げ支援策は、「企業が賃上げの原資を持続的に生み出せるよう、収益力を高め生産性向上につながる支援を行なう」という立場で、賃上げをした企業が設備投資などをした場合にその一部を支援するという「間接支援」が中心です(賃金アップ環境改善事業費補助金)。しかし、これでは赤字の企業や経営が大変な事業者では支援制度を使いたくても使えません。
これに対して、全国では賃上げをした企業に、その従業員数に乗じて支援金を支給する「直接支援」を行なっている県があります。日本共産党も国政でこうした支援制度を求めるとともに、都道府県でも導入を提案しています。
昨年の9月議会でも全国の事例をパネルで示して質問ました(下図)。県内の中小企業団体が会員企業に行なったアンケートでは、賃上げのために必要な施策として「社会保険料負担の軽減」がトップになっています。国の政策によるところもありますが、直接支援で支援金を支給すれば、賃上げした企業がそれを賃上げに伴う社会保険料負担の増加分に充てることもできるのではないでしょうか。

これまでの山梨県の支援策の問題点
間接支援と直接支援の効果も比較しました。今年の2月議会時点で山梨県の賃金アップ環境改善事業費補助金は、これまで5回の補正予算を組み、総額8億4千万円余りを支出しましたが助成件数は468件、これは県内企業数の1%ちょっとに留まります。これに対して人口規模も財政規模も山梨県と類似している徳島県では、直接支援に取り組みました。その内容は1回の補正予算で、2億7千万円余りを支出し、助成件数は1,466件です。制度を利用している企業数が山梨県の3倍です(県議会質問で使用したパネル・下図)。

しかし、県は「直接支援は、一時をしのぐ効果はあっても、その後の持続的な賃上げにつながるものではない」という答弁に終始しました。私は「一時的な支援はしないと言うが、まずは中小企業・小規模事業者へ直接支援を行って、賃上げを進めることによって、消費が拡大し企業収益も増える。こうした経済の好循環が生まれれば、一時的でない継続的な効果がある」と反論しました。
そして、「徳島県では、この賃上げ支援金で従業員規模が小さい事業者を中心に賃上げ支援につながったそうだ。これは山梨県の事業では手の届いていないところだ。本県でも、こうした賃上げ支援金を具体化することを改めて求める」と指摘しました。
山梨県も「直接支援」の方向示される 残る課題も
冒頭紹介したように、8月の最低賃金審議会の答申についての受け止めと合わせて、知事は県として緊急の支援策=直接支援を9月県議会に提案することを発表。その主な内容が担当課から先日示されました。内容は従業員の賃金を50円以上引き上げ、今回の最低賃金の答申額(1,113円)以上とした場合、正規・非正規を問わず支援の対象とし、各企業に賃上げによる増加額の6ケ月相当分について、その5割~7割程度分の支援金を支給するというものです。担当課の説明では概ね従業員一人当たり数万円の支援金になる見込みで、9月議会に向けて調整中とのことです。
ただ課題もあります。今回の支援策の対象企業は県内の中小企業や小規模事業者ですが、県が推奨する「豊かさ共創スリーアップ実践企業」の認証を取得していることが条件になるとしています。「スリーアップ」とは、「従業員のスキルアップ→企業の収益アップ→賃金アップ」という循環を企業に求めるというものですが、6月議会時点で県内企業数の約1割しか取得していない状況です。この状況では多くの企業が賃上げ支援金を活用できないことになってしまいます。スリーアップ認証を要件にしないなど、改善が求められます。9月議会でも、より有効な支援策になるように求めていきたいと思います。


