山梨県議会令和7年2月定例会では、山梨県の産業支援策の課題について3つの角度から取り上げました。その内容をお伝えします。(写真は予算特別委員会で質問する名取泰県議)

まだ支援の手が届いていない事業者が多数
一つは物価高騰対策・賃上げ支援についてです。
山梨県では物価高騰対策は事業者支援に重点を置くとして、企業が設備投資などを行なうことを補助の条件にしています。具体的には2月補正予算に「賃金アップ環境改善事業費補助金」として、賃上げをおこなった中小企業等が設備投資や環境整備などを行なった場合に補助金を支給する事業があります。しかし、物価高騰の下では設備投資自体が大変で、これでは一部の事業者にしか対策が行き届きません。実際にこの「賃金アップ環境改善事業費補助金」は令和4年の12月からの事業ですが、これまでの助成件数は133件(今年2月時点)。県内には中小零細企業が約3万6千社(R3年経済センサス)あるもとで、そのわずか0.3%の事業者にしか支援が届いていないことになります。
山梨県中小企業家同友会が昨年、会員に行なった経営実態調査では、「賃上げに取り組むために必要な支援策はなにか」の問いに対して、「社会保険料の事業主負担の軽減」が最も多く、「設備投資への支援」はその半分です。現場の声にこたえて、設備投資などを前提にせず、社会保険料負担の軽減に活用できる支援金を支給するほうが有効ではないでしょうか。
賃上げを行なった中小零細企業に従業員一人当たり3万円から5万円の一時金を支給する「賃上げ支援金」を昨年度実施した岩手県や徳島県に続いて、今年度は群馬県も実施に踏み出したと聞いています。こうした直接支援こそ現場から求められている物価高騰対策・賃上げ支援策だと思います。
7億5千万円を助成し県内からの雇用数はわずか4人
二つは産業集積促進助成金についてです。
山梨県では県内産業や県内経済の活性化、及び雇用拡大を目的に、県内に事務所や工場を開く企業に対して助成金を支給しています。助成金の要件はいくつかありますが、その一つは雇用の増加です。雇用と言っても県内からの雇用と、県外からの雇用があります。ここ数年の助成を受けた企業の雇用拡大数に占める県内雇用数をみると、文末のグラフのようにその割合が減少しています。
山梨県では転入人口を増やす目的で県外からの雇用を増やした企業には助成金を加算することを要綱に盛り込んでいます。もちろん県外からの雇用はその後県内に居住することが条件になりますが、今年度と来年度にかけて7億5千万円を助成するある企業では、県内からの雇用拡大はわずか4人とあまりに少なすぎます。県内からの雇用をもっと増やすことを助成の要件に加えるべきと考えます。
「兵器の見本市」への出展支援はやめるべき
三つは防衛関連産業への支援についてです。
山梨県では令和6年度から航空宇宙防衛関連産業を成長分野と位置付け、県内企業の参入支援をはじめました。令和7年度は展示会への出展経費の助成金(1社あたり上限75万円)を予算化しています。2月議会の予算特別委員会で今年5月に千葉県幕張メッセで開催予定の『DSEI JAPAN』への出展も想定しているか確認すると、「想定している」との答弁が。『DSEI JAPAN』は国内外の防衛装備品が展示されるイベントで、別名「兵器の見本市」と言われます。マスコミでも「誰でも当たる銃が幕張に。世界の最新鋭武器ズラリ」「日本とは思えない光景。国内外の軍需産業が注目」などと報じられて来ました。
地方自治体の役割は「住民の福祉の増進を図る」ことが基本であるはずです(地方自治法)。山梨県が、兵器開発につながる防衛関連産業へ、県内企業を巻き込むような参入支援はやめるべきと、その場でも質しました。